コラム

猫はエサをのために頑張らない?

犬やカラスなどの動物たちが食べ物を得るために難しい仕掛けを解くのにチャレンジする動画をTV番組やYouTubeで見たことがある人がいるかもしれません。今回は猫でフードパズルを試した場合にどのような行動をとるのかを米カリフォルニア大学デービス校の猫科の心理行動学者であるミケル・M・デルガド氏の研究チームが実験して面白い結果を得られたのでご紹介します。

reference:Domestic cats (Felis catus) prefer freely available food over food that requires effort

実験テーマ「コントラフリーローディング」とは

今回行われた実験の主要テーマであるコントラフリーローディングとは、日本語で逆たかり行動と言われ、生き物は労せずに与えられた餌を食べるよりも、努力して餌を食べるのを好むという行動心理のことです。

1963年に動物心理学者のグレン・ジェンセン氏が提唱した言葉で、彼は約200匹のラットにボウルに入った餌とペダルを数回踏まなければならない給餌器の餌のどちらを食べるのかを選択させ、ラットが後者を積極的に選ぶことを発見しました。

別の研究者により同様の研究を様々な齧歯類、霊長類、鳥類、犬、クマで試したところ、ジェンセン氏の研究と同じ結果になったのですが、飼い猫については同様の結果を得ることが出来なかったのです。

reference:英語版Wikipedia「Contrafreeloading」

猫は意味のないことはしない?

猫は動物の中でも特に自分が好きなように食事をするのを好むと言われていますが、それは怠け者だからでしょうか?

過去の実験では6匹の猫がコントラフリーローディングに失敗したため、今回の実験ではフードパズルと同様の大きさ・形状のトレイであれば猫はコントラフリーローディングを行い、または活発的な猫ほど効果があるのではないかという仮説を立て、去勢済みの室内飼いの猫17匹を対象に30分間の試行を10回行いました。

出典:Springer Link

結果は4匹の猫はパズルで提供された餌をほとんど食べず、5匹の猫はパズルの餌に弱いながらも興味を示しました。しかし、8匹の猫は興味を持たなかったのです。

餌を食べる際の第一選択はフードパズルから食べる猫が多く、最終的には自由に食べられるトレイからの餌を多く食べました。

この結果から分かることは、性別、年齢、フードパズルの経験の有無は関係なく、猫は家庭環境下ではコントラフリーローディング効果が弱いということでした。

猫にフードパズルは決して無駄ではない

今回の実験ではフードパズルを理解していた猫であってもトレイの餌を選びましたが、猫は活動的ではあったので「怠け者」であるという意見は間違っていることは分かりました。

デルガド氏は2016年にフードパズルは猫のダイエットやストレス解消、トレーニングに有効という別の研究結果を発表しているため、フードパズル自体は猫にいい刺激を与える可能性が十分にあります。

年老いてあまり走れなくなった猫の運動不足解消には有効な手段かもしれません。

狩猟動物だから興味が薄いのか

この研究内容を聞いたときに、猫3匹を計20年以上飼っている筆者としては、そりゃそうなるよという感想でした。

他の動物に比べ猫は基本的に動かないものに対する興味がほとんど無い動物ですので、実験で使用したような動作性の無いフードパズルに反応がないのも納得です。

仮に今回使用したフードパズルの中に、緩急付けて機敏に動く虫がいた場合は猫の好みによるとは思いますが、大抵は狂喜乱舞することでしょう。

猫は生粋の狩猟動物ですので、狩りに見立てた遊びが大好きです。他の実験でフードパズルを好んだ動物たちとは違い、草食でも雑食でもなくて完全な肉食動物です。

とは言っても人から餌をもらうのが嫌いなわけではなく、むしろ楽に食べられ餌を喜んで食べます。その代わりに苦労しなかった分の運動欲求が遊びに向けられる傾向が室内飼いの猫に強く出ていると感じます。

遊びでも個体によって好みの差が大きくてめんどくさい猫ちゃんですが、飼われている方は、反応が鈍い猫ちゃんであってもいっぱい走り回れるように遊んであげてください。

猫にとって狩りの瞬間ほど刺激的で楽しい時間はないのですから。