コラム

ロシア人は本当にクマをペットにするのか?

 ロシアで飼育される動物で一番イメージする動物はなんでしょうか?大抵の人は犬か猫を思い浮かべるのではないでしょうか。実際に人気なのは猫なのですが、中にはクマと一緒に生活するようなにわかには信じられない光景を目撃することも…。日本人からしてみればクマは凶暴で動物園以外では出会いたくない生き物です。実際のロシアでのクマ扱いを調べましたのでご紹介します。

クマのステパンと暮らすロシア人夫婦

2016年にNewYorkPostなどの世界中のメディアで紹介された人間の様なクマのステパンと暮らすロシア人夫婦をご存じでしょうか。

ひょっとすると世界で一番有名なクマかもしれないのがクマのステパンですが、生後3か月の時に森で母熊と離れてさまよっているところをハンターによって保護され、その後スヴェトラーナさんとユーリー・パンテレーエンコさん夫婦に引き取られ29年間一緒に生活を送っています。

驚くことに夫婦と一緒に暮らすクマのステパンは檻に閉じ込められたり鎖で繋がれているわけではなく、家で夫婦と一緒に食事をしたりTVを見たり遊んだりと人間の子供のように自由に過ごしているのです。

スヴェトラーナさんは「彼は人を愛し、本当に社交的なクマです。世間がどう思うかはともかく、彼はまったく攻撃的ではなく一度もかまれたことはありません」と当時取材したCatersNewsの記者に語り、取材から5年が経ちステパンが29歳になった今でも事故は起きていません。

ステパンはロシア映画数本に出演したり、伝記が12作品もあるなど穏やかな性格もあって大変人気があります。最近では写真家であるオルガ・バランツェワ氏のクマ(ステパン)、母、娘でピクニックをしている写真やミラ・ジダーノワ氏の森の中で華やかな衣装をきた女性とクマ(ステパン)という構図の写真はまさにおとぎ話のようだと話題にもなりました。

日本ではあまり話題になっていませんでしたが、2017年の7月頃にはステパンにショウマというオスの子供が誕生していたようで、母熊が餌を与えなかったため夫婦で育てることにした様子。その他にも2匹ほど子宝に恵まれたようで子供たちは順調に育っているとのことです。

ロシアの街中はクマが歩いているのが普通?

ネットでは町の中を犬のようにクマを散歩させている様子や何にも縛られることもなく平然とクマと人が一緒にいる様子が話題になることがあります。

出典:bibo.kz

そんな様子ばかりを見ているとロシアではクマって犬猫のように馴染み深くて怖くない生き物なのかと思ってしまいますが、ロシアのいくつかのフォーラムを除いてみるとそういうわけでもないということが分かりました。

どうやら鎖で繋がれて街中を歩いてるケースはサーカスの宣伝活動の一環のようで、ペット感覚ではないようです。Youtubeなどで実際の様子を見てみると大人の男が二人がかりで連れていてもクマの気分次第な感じがして怖いですね。

その他にも普通のペットとして連れているケースもあるようですが、ロシア内のホームページを辿っても明確なペットとして散歩しているのか宣伝なのかを見分けることは難しいという結論に至りました。

ただ鎖もリードもないクマに関しては、純粋に街中に迷い込んだクマか飼い主が散歩させているだけのようなのでにわかには信じがたいですね。

出典:bibo.kz

フォーラムやYoutubeのクマ動画のロシア人のコメントを見ていると、珍しいね、どうすれば飼えるの?という興味を持つコメントから、本当に安全なの?という声も散見しますので、日常的に当たり前な光景ではなく一部のクマの生息域に近い町で起きる稀有な話と考えたほうがいいのかもしれません。

出典:bibo.kz

そもそもクマって一般人が飼っていいの?

最初に誰もが疑問に思うのがこの点だと思います。日本では2020年6月から動物愛護管理法により、愛玩目的等での飼育が禁止されましたので一般人では飼育不可能です。

ロシアでは野生動物の保護という観点では日本と同等の厳しさがあるように見受けられますが、飼育する動物の種類に対する厳しさは一定の条件を除けば緩いとも言えます。

一般人が飼ってはいけない動物の条件はロシア連邦のレッドリストに載っていないことが条件で、例えばクマであればヒグマのみがリストに無いため飼育が許されています。

実際にロシア国内でクマを飼おうと思ったときはオンラインショップZoo-ekzo.ru等を利用して購入することができます。

その他にも廃業するサーカスから引き取ったり、保護された野生の子熊を飼うという特殊なパターンもあるようです。

ロシア人だってクマは珍しいし怖い

ここまで記事を読んでいただいた読者は気づいた方もいるかと思いますが、ロシア人にとっても私たち日本人と同じようにクマは珍しく危険な生き物。

ロシアの首都であるモスクワ周辺はクマの生息域から外れているため、クマに出会うことはまずありませんので、かなり珍しく感じるはずです。

ですが、鮭が大量に遡上してくるカムチャッカ半島と、ウラル地方やシベリア、極東よりに住む人々はクマの生息域と重なっていることもあり、街中にクマが出没することもあるため良くも悪くも慣れています。

地域差はあれどロシアで一つ言えるのは、日本と違いクマは馴染み深い生き物で、ロシアを象徴する国獣はクマとなっているぐらいですから、文化として根付いていることは間違いないでしょう。

モスクワ五輪のマスコットキャラクターはクマのミーシャでしたからね!