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聞いた音を完全コピー?人の声やチェンソーまで何でもモノマネできる驚異の鳥「コトドリ」

 皆さんはコトドリと言う鳥を聞いたことありますか?2008年のNHK番組 第086回「ダーウィンが来た」で紹介され、インターネットで一時的に話題に上がり、最近でもTVのおもしろ動画枠での放送もあり反響があった鳥です。反響の理由は、コトドリの音真似のレベルの高さにあり、基本的に聞いた音をほぼ完全に再現することができる器用な鳥です。コトドリはチェンソーの音からゲームの電子音、人の声といったものを全て再現できます。今回はこの珍しい鳥を紹介していきましょう。

コトドリ

スズメ目コトドリ科に分類されるオーストラリアの固有の鳥類の一種で、全長80cmから100cm程の大きさになります。一見すると凄い大きい鳥に感じますが、尾羽の長さが約60cm程になるので本体はちょっと大きめなウサギかキジぐらいの大きさです。

名前の由来になったのは鳴き声が琴の音色のようとかそういう理由ではなく、レースのような尻尾を持っていて、竪琴に似ているためコトドリと言われるようになりました。

コトドリはオーストラリアではLyrebird(竪琴の鳥) と呼ばれていて、10セント硬化に描かれたり、1932年に切手にも採用されるほど親しまれています。

左:10セント硬貨 右:1932年発行切手

最大の特徴は「様々な音を真似することができる」ということです。オウムやセキセイインコなどは人間の言葉を真似しますが、コトドリはチェンソー、カメラのシャッター音、光線銃の射撃音から何でも真似してしまうのです。

色々な音を真似するコトドリですが音真似をするのは、実は繁殖の時期にオスがメスの気を引くためなのです。オスは音真似のレパートリーの広さと、長い尾羽を使った踊りでメスに求愛します。どこの世界でも努力して異性にアピールする姿は変わりませんね。

photo by Peter Gibson

コトドリの鳴声を聞こう(動画)

上記の動画を目をつぶってご覧になってみてください。完全に工事現場が再現されています。ノコギリ、トンカチ、ドリルから見事としか言いようがありません。

こちらの動画は、カメラのシャッター音、車の防犯アラーム、チェンソー、光線銃、人の声真似を順番に聞くことが出来る欲張りセットになってます(笑)。こんな芸達者な鳥が森のなかにいるのですから惑わされてしまいそうです。

赤ちゃんの泣き声すらマネするコトドリ

オーストラリアのシドニーにあるタロンガ動物園のツイートより、

「この目覚ましは予想外でしょう!このコトドリは赤ちゃんの泣き声など様々な声を再現できる素晴らしい能力を持っています!」

という投稿があり、掲載された動画を見ると本物の赤ちゃんが泣いているのではと思うぐらいリアルな声真似をするコトドリの姿が映されています。

ここまで凄いと驚きと同時に怖いと思った人も多そうですね。

コトドリの求愛ダンス

動画のサムネイルを見ると虫に見えますが、前面に尻羽を広げたコトドリの姿です。頭の上に尾羽を広げて鳴きながら踊る派手な姿はまさにアイドル?といった風貌です。踊りながら様々な声を出すことでメスの気を引いてます。

コトドリは求愛に手段を選ばない!?

動物にはモビング(擬攻撃)と言われる行動があります。モビングとは弱い生き物が捕食者に対して、敢えて突撃するような素振りを見せたり、集団で追いかけまわすなどの嫌がらせをして追い払う目的の行動のことです。

コトドリもモビングを行うのですが、なんと交尾をするためにこの行動を利用するのです。まず得意の声真似を用いて他の鳥たちが捕食者に対して集団で威嚇しているような状況を一羽で再現してメスを怖がらせます。

怖がったメスは単独では天敵に襲われ死んでしまう可能性があるため、近くにいるオス(犯人)に助けを求めるのですが、なんと狡猾にもオスはそれを利用しメスに襲いかかり交尾を始めるのです。

行為が終わるまで声真似を継続することで危機的状況を演出し、メスを怖がらせ動けないようにしてしまい、行為中は自慢の長い尾で相手の顔を覆い、自作自演であることをばれないようにする用意周到さです。

この事実は2021年に公開された研究論文により明らかになり、声真似の汎用性の高さを証明することとなりました。

これを聞いてコトドリへの好感度が下がった方もいるかもしれませんが、実はカモシカなどの動物にも同様の行動が確認されていますので、生物の種としての目的を本能で果たしているだけなのでしょう。

コトドリに騙される人々

オーストラリアのコトドリの生息域では、コトドリに騙されるちょっとした事件が発生することがあります。

ある日、森林作業員が就業前に続々と引き上げてくる自体があったそうで、現場監督員が「チャイムもなっていないのに何で仕事を引き上げてきたのか」と周りの従業員に聞くと、従業員たちは「チャイムなってましたよ?」と答えたそうです。どうやら作業員達はコトドリのチャイムのモノマネに騙されて仕事を時間よりも早く切り上げてしまったそうです。

他にもコトドリの生息域では、森の中で子供の名前を呼んではいけないと言われているそうです。それというのも、コトドリが子供を呼ぶ声を真似してしまい、子供が騙されて森の奥に迷い込んでしまうからなのです。

日本の動物園にはいない?

コトドリが日本の動物園で見れるのかを日本動物園水族館協会HPで調べてみましたが、日本の動物園にいるという情報は確認できませんでした…。オーストラリアであればアデレード動物園に行けば飼育されているため、コトドリに出会えるようです。